2016-17 / 2017-18 / 2018-19 日本バスケの新たな夜明け Bリーグ開幕からの3シーズン

2016-17シーズン、Bリーグが開幕
チームもクラブも規模を拡大して臨んだ
この2016-17シーズンから、独立プロのbjリーグと実業団チームが中心だったNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)が統合されたプロリーグ、Bリーグが開幕。日本のバスケットボール界は、新たなフェーズへと入っていった。これにともない、エヴェッサは関西文化圏としていた本拠地を大阪府に変更。以前は大阪府内各地、ときには兵庫県内でも試合を行っていたが、舞洲アリーナをホームアリーナと定めた。7000人を収容する会場を華やかに彩るために、気鋭のデジタルアート集団であるチームラボを起用し、プロジェクションマッピングを取り入れるなど演出面を強化。プロの興行を行うに相応しいものへと、大きくスケールアップした。また、鉄道が通らない舞洲のアクセス面の弱点は、試合後に最寄り駅までのシャトルバスを独自に運行することでカバーした。
記念すべきBリーグ初年度に指揮を執ったのは、前季に続いて桶谷大ヘッドコーチ(HC)。選手は外国籍を一新し、NBAでのプレー経験があるジョシュ・ハレルソン、前季に信州ブレイブウォリアーズでプレーしていたエグゼビア・ギブソン、そして中国籍の劉瑾を獲得した。
日本人選手は並里成、西裕太郎、石橋晴行が退団。西宮(現神戸)ストークスから合田怜と根来新之助、日立サンロッカーズ東京・渋谷(現サンロッカーズ渋谷)から日本代表経験がある木下博之が加入する。さらに芦屋大に進んでいた橋本拓哉が、4季ぶりの復帰を果たした。橋本を含め新加入の4人は、いずれも大阪出身。残留した今野翔太と合わせて、日本人ロスターの半分がフランチャイズプレーヤーと、図らずも大阪色が強く表れた編成になった。
開幕戦は9月24・25日にレバンガ北海道を迎え、ホームで戦った。GAME1はギブソンが17得点、ハレルソンが11得点、木下も11得点と新戦力が活躍して64-53で、記念すべきBリーグの初陣を勝利で飾った。翌日は失点を70点に抑えながらも得点が伸ばせず、59-70で敗戦。開幕節は、1勝1敗に終わった。観客は24日が3328人、25日は2932人が来場。bjリーグ最終年だった前季の平均来場者数が1742人だったことを考えると、新たに発足したBリーグと、エヴェッサへの注目度が高まっていることが来場者数に表れた。
シーズン序盤戦の10月8日から16日にかけては名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、シーホース三河と対戦。旧NBL勢と公式戦で対戦するのは、このシーズンが初めて。事前に研究を重ねてはいるが、相手の実力がいかほどかは、実際に対戦してみないことには実態をつかみ切れない。果たしてこの4連戦は、旧NBL勢の両者から勝ち星をあげられず、4連敗を喫した。
旧NBL勢と旧bjリーグ勢の間に、どれほど競技力の差があるのか。同じ西地区に属し、このシーズンで幾度も顔を合わせた名古屋D、三河との対戦から、それが浮かび上がった。NBL最終シーズンの2015-16に12チーム中7位だった名古屋Dとは初対戦で連敗したが、それ以降は4連勝とシーズン通算で勝ち越した。NBLで中堅どころとは互角か、あるいはそれ以上の戦いができる証明になった。
一方で前季に年間2位の成績を収めたのを始め、トップカテゴリーでの優勝が通算6回、天皇杯は9回制覇している三河に対しては30点差以上の大敗を喫したゲームもあるなど、勝利が遠かった。しかしシーズン最終盤の4月29日にアウェイで、70-68と2点差で初勝利をあげる。シーズン通算は1勝7敗と大きく負け越したが、最終盤に旧NBLの強豪からあげた1勝は、チームが戦いながら成長を遂げたことを示し、旧NBL勢と旧bjリーグ勢の実力差がわずかながらでも縮まってきている証でもあった。
シーズンの1/3が過ぎた12月9日に劉瑾との契約を解除し、bjリーグ時代に秋田ノーザンハピネッツで最優秀シックスマン、シーズンベスト5に選ばれたリチャード・ロビーが入団。ロビーは直前に在籍していた三遠ネオフェニックスで14試合に出場して1試合平均10.9得点をあげていて、エヴェッサはチームの得点力向上を期待して獲得した。また12月9日には今野、合田の出身校である、大阪学院大4年次の澤邊圭太とプロ契約を結んだ。
チャンピオンシップ進出へあと1勝
最終決戦は、アウェーでの琉球戦
シーズンの序盤から中盤にかけて、エヴェッサの順位は西地区6チーム中4位あたりで推移していた。千葉ジェッツ、アルバルク東京に連敗を喫するなど、やはり旧NBLの強豪チームとの対戦は苦戦したが、旧bjリーグ勢からは着実に白星を積み上げる。そうするうちに、徐々に順位が浮上。シーズン終盤には琉球ゴールデンキングスと、チャンピオンシップ(CS)進出争いを繰り広げる。西地区2位を争う戦いは最後まで両者が譲らず、決着はレギュラーシーズン最終節の直接対決までもつれ込んだ。最終節の舞台は、bjリーグ最終年だった前季と同じく沖縄市体育館。厳しいアウェーの地ではあったが、2連戦で1勝でもすれば2位が確定と数字の上ではエヴェッサが優位に立っていた。しかし……。
5月6日のGAME1は第3Qまで64-48と16点のリードを築きながら、第4Qに相手に28得点を奪われてオーバータイムに。ここでも琉球の勢いを止められず、88-83で痛い敗戦を喫した。翌日のGAME2は琉球が前日の勢いそのままに猛攻を仕掛け、第1Q終了時は14-26。エヴェッサは第2Qに反撃して、前半終了時に39-41と迫る。第3Qは両者ともディフェンスに軸足を置いた戦いになり、エヴェッサは失点を16にとどめるが、得点は10しか奪えない。8点差を追いかける最終クォーターは獲られたら獲り返す展開になったが、差を縮められぬままタイムアップ。つかみかけていたCS出場権が、両手の間からこぼれ落ちた。
最終成績は28勝32敗で西地区6チーム中3位、リーグ全体では9位。個人タイトルは、ハレルソンがブロックショット王に輝いた。
2017-18は、新外国籍選手が不調
降格プレーオフが視界に入るも、免れる
前季にあと一歩で届かなかったCS進出。2017-18シーズンは、それを第一目標に掲げて望んだ。日本人選手は橋本尚明、久保田遼、相馬卓弥が退団し、綿貫瞬は京都ハンナリーズに期限付き移籍でチームを離れた。替わって前季に栃木(現宇都宮)ブレックスでBリーグ初代優勝メンバーのひとりになった熊谷尚也、大阪市住之江区出身で関西大学からサンロッカーズ渋谷に進んでいた藤髙宗一郎、島根スサノオマジックに在籍していた寒竹隼人、安部潤が新たに加わった。
外国籍選手は全員が入れ替えとなり、トレント・プレイステッド、グレッグ・スミス、デイビッド・ウェアが新加入した。外国籍選手が、どれほどの好成績を収めるか。それがチームの順位に直結することは、その後のBリーグにおいても変わらない。その点においてこのシーズンの開幕ロスターに名を連ねた外国籍選手は、残念ながらいずれもが期待外れに終わった。
前季にA東京に在籍し、エース格と期待したプレイステッドは開幕前にアキレス腱を断裂して12月に退団。NBAでのプレー経験があるスミスも、コンディションが整わず不調が続く。ウェアはシーズン終了まで在籍したが、武器とされた3Pシュートはシーズン通算で成功率が30%を割り込むなど、当初の期待には及ばなかった。主力と想定していた戦力が軒並み期待外れに終わったため、9月末の開幕から年内は2度の5連敗に、1度の4連敗と低迷。降格圏内をさまよった。シーズン途中で補強を行ったが、それは継ぎ接ぎのようになってしまったと言わざるを得なかった。
プレイステッドの離脱直後に、日本でのプレー経験が長いジーノ・ポマーレを緊急補強。しかし加入後は25試合に出場して1試合平均11.5得点と、残す結果がチームに大きな影響を与えなかったことから1月23日に契約を解除。これに先んじて1月9日にはスミスも、コンディションの向上が見通せず退団している。
スミスの替わりには211cmのビッグマン、キース・ベンソンが1月18日に加入。その高さを生かしてゴール付近でスコアをあげ、チームの貴重な得点源になった。また2月2日にはポマーレの替わりとして、前季限りでエヴェッサを退団し、NBAの下部組織であるGリーグでプレーしていたギブソンを呼び戻す。ギブソンもベンソンとともに得点源となり、ようやく戦力が整った。
だが、あまりにも遅かった。ベンソンとギブソンのラインナップが揃ってからの28試合は14勝14敗と五分の星を収めたが、最終的には24勝36敗で西地区6チーム中4位。リーグ全体では13位で、15位以下が対象となる降格プレーオフは免れた。危機的状況だった前半戦を思えばよく立て直したとも言えるが、やはりなによりも、悔しい思いが先に立つシーズンだった。
新たに穂坂HCが就いた2018-19
度重なる主力の故障により、低調に終わる
契約満了にともない、bjリーグ時代から3シーズンにわたってチームを率いた桶谷HCが退団。替わって岩手ビッグブルズ時代からの桶谷の右腕であり、2016-17シーズンからエヴェッサのアシスタントコーチを務めていた穂坂健祐がHCに昇格した。 前季のメンバーから寒竹、安部、澤邊、ウェア、キースが退団した。東海大九州卒のルーキー長野誠史、帰化選手のファイ・パプ月留が新加入し、畠山俊樹が4季ぶり、ハレルソンが2季ぶりに復帰。前年の日本代表活動中の問題行動によって橋本に課せられた出場停止処分が継続しているため、実質的にロスターがひとり少ない状態になった。
33歳の若き指揮官が率いたチームはアウェイでの開幕戦で北海道に勝利し、開幕5試合を4勝1敗と好スタートを切った。しかしその影では、開幕2戦目でギブソンが右手親指を骨折し1ヶ月にわたってチームを離れる。その後に熊谷もケガでチームを離脱と、主力選手に故障者が相次いだ。チームはギブソンの代役として、前季にB2の岩手に在籍していたジャマール・ソープを緊急獲得した。
主力選手の故障の影響もあって、10月20日から11月7日にかけて7連敗。対戦相手が名古屋D、琉球、千葉ジェッツ、川崎ブレイブサンダースと強豪ばかりだった不運もあった。そのなかでの明るい材料は、11月3日の川崎戦からギブソンが復帰したこと。この復帰戦ではチーム最多の24得点をあげ、復調を結果で示して見せた。
11月10・11日の横浜ビー・コルセアーズ戦に連勝して連敗を止め、12月23日から30日かけては4連勝を記録したが、前半の30試合を終えたところで13勝17敗と負けが先行する苦しい展開。このときのチームは、守備力は前季より向上が図られていたが、得点力に課題を残していた。
その課題を解決するため、10試合に出場して1試合平均5.8得点と物足りない成績だったソープとの契約を解除。替わってこれまで主にヨーロッパのチームに在籍し、日本でのプレーは初めてとなるトレバー・ムバクウェを獲得。しかしムバクウェも初めての日本、しかもシーズン途中加入ということもあってか、19試合に出場して1試合平均9.1得点と、さしたるインパクトは残せなかった。
このシーズンを通じて1試合平均得点が2ケタを越えたのは15.2のハレルソンと、14.4のギブソンのみ。このふたりが封じられると、スコアが伸ばせないチームだった。頼みの綱のひとりギブソンは、今度は左膝の故障で1月18日に手術を受け、約3ヶ月間にわたって離脱。合田も1月の試合中に左足を骨折して、全治2ヶ月の診断。巻き返しを期した大事な時期に主力が欠けた影響は少なくなく、後半戦は6連敗、5連敗と大型連敗を喫する。一方でシーズン最多連勝は12月末に記録した4連勝と、爆発力に欠けていた。
最終的には23勝37敗で西地区4位、全体では12位の結果。ハレルソンがリバウンド王のタイトルを手にしたが、チームとしては相次ぐ故障者に泣かされ、CS争いに絡むことなくシーズンを終えてしまった。
またこのシーズンは特別指定選手として、1月に大阪学院大の吉井裕鷹が、2月には天理大の佐々木隆成が加入した。吉井は16試合に出場して1試合平均14.8分出場、同5.2得点。佐々木は8試合に出場して1試合平均1.4分出場、同0.2得点のスタッツを残した。ともに現役の大学生だったふたりはエヴェッサでプロの舞台を経験し、のちに日本代表に名を連ねるまでになった。
(文/カワサキマサシ)