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2015-16 bjリーグのラストシーズン 有終の美を目指した戦いの行方



 

沖縄を2度の優勝に導いた桶谷HCを招聘
40歳の若き指揮官は、決意を新たに望んだ

2015-16シーズンは、11季続いたbjリーグの最後のシーズンになった。

2005年のbjリーグ発足以降、バスケットボールの国内リーグはJBL(日本バスケットボールリーグ。2013年にNBL[ナショナル・バスケットボール・リーグ]に改編)とふたつのリーグが並立する状態にあった。FIBA(国際バスケットボール連盟)はかねてから「トップリーグは1国1リーグが望ましい」との要望を出し、2010年からbjリーグ、JBL、FIBAの三者間で協議が続けられてきたが、話し合いは遅々として進まなかった。

業を煮やしたFIBAは2014年10月にJBA(日本バスケットボール協会)に対して、国際試合への出場禁止などの事項を含めた会員資格停止処分を下す。現状に変更がなければ、2020年に開催が決定している東京オリンピックへの出場できない非常事態。FIBAは川淵三郎元Jリーグチェアマンを中心にした改革チーム「タスクフォース」を発足させて、リーグ統合問題に直接介入する。これを機に、事態は大きく進展した。

川淵はJリーグでもそうだったように、タスクフォースでも剛腕を振るった。そして2015年4月に、ふたつのリーグが統合した新リーグの運営法人であるジャパン・プロフェッショナル・バスケットボール・リーグを発足。翌2016年9月に新たなプロリーグ、Bリーグが開幕することが決まった。

エヴェッサはbjリーグのラストシーズンを優勝で飾るべく、新たなヘッドコーチ(HC)に桶谷大を招聘。桶谷は2005年に大分ヒートデビルズのアシスタントコーチとして指導者のキャリアをスタートさせ、翌シーズンにHCに昇格した。その後は琉球ゴールデンキングスを2度の優勝に導き、次に指揮を執った岩手ビッグブルズでは2014-15シーズンにbjリーグ記録の19連勝を達成。そのシーズンで岩手を初のプレーオフに導いたのち、HCを退任。優勝経験もある実績豊富なHCがフリーになったところで、エヴェッサが白羽の矢を立てたのだ。

40歳の若き指揮官はHC就任に際して「エヴェッサは3連覇を含め、歴史と伝統のあるチーム。ブースターのみなさんも熱くて、沖縄時代もエヴェッサとアウェーで対戦するのは嫌だったんです。そんなチームからお声を掛けていただき、光栄に思います。目指すものは今さら言うことではありませんが、もちろんbjリーグのラストシーズンに優勝すること。エヴェッサの優勝から始まったbjリーグの最後を、エヴェッサの優勝で閉じる。それがbjリーグの、美しい締めくくり方になると思うんです。それを果たして、その先にあるBリーグの開幕につなげていきたいです」と豊富を口にした。

 

希代の“ファンタジスタ”並里成が新加入も
外国籍選手が機能せず、序盤戦は爆発力を欠く

ロスターは今野翔太、相馬卓弥の主力に、このシーズン中に42歳になるベテランの石橋晴行、若手の西裕太郎、橋本尚明が残留する。新加入はリーグ屈指の大物ポイントガードで、創造性あふれるプレーから“ファンタジスタ”の異名を持つ並里成の獲得に成功。さらに綿貫瞬が3シーズンぶりに復帰を果たし、早稲田大時代にユニバーシアード日本代表に選出された経験を持つビッグマン、久保田遼も新たに加わった。

一方で外国籍選手は、全員を入れ替えた。前シーズンに桶谷HCのもと岩手でプレーしていたローレンス・ブラックレッジが2011-12シーズン以来、4季ぶりにエヴェッサに復帰。前季に浜松・東三河フェニックスの優勝に貢献したオルー・アシャオル、そしてNBLの下部リーグであるNBDLの東京エクセレンスでプレーしていたマーカリ・サンダース・フリソンを獲得した。

優勝を目指してホームで意気揚々と迎えた開幕戦は、滋賀レイクスターズ(現レイクス)を相手にまさかの連敗。GAME1は半数近くのメンバーが入れ替わった影響からかミスが目立ち、GAME2は残り1.8秒で逆転を許してしまった。とはいえ立ち直りは早く、翌週のバンビシャス奈良戦から5連勝、ひとつの負けを挟んでさらに4連勝。しかしその後に3連敗を喫するなど安定感に欠け、開幕から20戦を終えて12勝8敗と、思うように勝ち星を伸ばせずにいた。

その要因のひとつは、外国籍選手が想定どおりに機能しなかったこと。フリソンは開幕戦で肩を負傷し、ケガを抱えながらプレーを続けていた。1試合平均6.3得点、同5.3リバウンドと本来の姿からほど遠いスタッツしか残せないでいたフリソンとの契約を12月23日付けで解除。翌日に198cmのフォワード、マイケル・シングルタリーと新規契約を結んだことを発表した。

シングルタリーは突出した成績をあげるわけではないが、人格者であり、チームプレーヤーとしては優れた選手だった。このころは開幕から3ヶ月が過ぎて選手間の連携も練度が上がり、白星の増産体制に入る。30試合を終えたところで、20勝10敗。ウエスタンカンファレンスは琉球と京都ハンナリーズが一歩先行し、エヴェッサはそれを追う位置にいた。

終盤戦の優勝争いとその先のプレーオフを見据え、異なるタイプ、ポジションの選手が必要と判断して、クラブはシングルタリーとの契約を2月12日付で満了。同日に、前季まで仙台89ERSに在籍していたディアンジェロ・ハミルトンの獲得をリリースした。ハミルトンは25歳と若く、陽気な性格ですぐにチームに溶け込んだ。なかでもブラックレッジとの相性が良く、コート内でもふたりの連携プレーは得点パターンのひとつになる。加入直後にアシャオルがケガで一時期離脱したが、ハミルトンはその穴を埋める活躍をした。

 

高松戦の第4Qで、希有なクオーター完封を達成
終盤戦は上位を争うライバルとの直接対決が続く

このシーズンのトピックスのひとつに上げられる出来事が、2月28日にアウェーで戦った高松ファイブアローズ戦であった。試合は一進一退の攻防が続き、第3Qを終えて46-50と4点ビハインドの展開。勝負をかけた第4Q、エヴェッサは立ち上がりからディフェンスの圧力を高め、高松の攻撃を次々と跳ね返し続ける。ファウルで相手にフリースローを与える場面もあったが、高松はこれをことごとく外す。そしてゲームクロックが残り2分を切ったころから、場内にはざわめきが起こり始めた。ここまでこのクオーターでエヴェッサは、高松に1点も与えていないのだ。その後も高松の攻撃を跳ねのけ、第4Qは無失点。攻めては13点を奪って50-59で逆転勝利。トップレベルのゲームでほぼ見られないクオーター完封を実現し、連勝をシーズン最多の6に伸ばした(翌週の京都戦にも勝利し、このシーズンの最多連勝は7)。

終盤戦は京都、沖縄に加えて島根スサノオマジック、滋賀と、上位を争うライバル勢との対戦が多く残されていた。ラストスパートをかけて上位勢の追撃を目論んだが、3月5・6日の京都とのホーム戦は1勝1敗。島根と滋賀にはそれぞれアウェーで連敗を喫してしまい、カンファレンス1位の可能性が消滅。最終盤はプレーオフのホーム開催権が得られる4位以内を目指した。しかしアウェーの沖縄で戦ったレギュラーシーズン最終戦を1勝1敗とし、最終成績は35勝17敗でウエスタンカンファレンス6位。4位の浜松にわずか1勝及ばず、プレーオフファーストラウンドはカンファレンス3位の島根と、4月30日・5月1日にアウェーで対戦することになった。

 

アウェーでのプレーオフファーストラウンド
島根とのディフェンスゲームの行方は……

島根とのレギュラーシーズンの対戦は序盤戦にホームで2勝し、終盤のアウェー戦で2敗と五分。順位こそ島根の3位に対してエヴェッサは6位だが、勝利数の差はわずか2。彼我に力の差はない。あえて懸念事項をあげるとすれば、3月12・13日のアウェー戦で連敗していること。2試合ともロースコアの展開のなかでGAME1は10点差、GAME2は15点差と、エヴェッサにとっては良くはないゲーム内容だった。

エヴェッサはレギュラーシーズン終了から1週間の調整期間を経て、島根に乗り込んだ。4月30日のGAME1は、序盤から前回対戦と同様にディフェンスゲームの展開。ガード陣が積極的にプレスをかけるなど、ディフェンスの集中力を切らさず、第3Qまで各クオーターの失点を15点以下に抑える。その間に少ないチャンスをものにし、第3Q終了時点でリードは13点。第4Qは中盤以降に得点が止まり、その間に島根の追い上げを許して残り1分09秒に3点差に迫られたが守り切り、最終的には57-62で勝利した。

翌日のGAME2は第1Qで20失点を喫して、追いかける展開に。しかし第2Qは本来のディフェンスを取り戻して、相手に与えた得点はわずか5。攻めては第1Qと同じく17得点を奪い、ゲームの主導権を奪い返した。後半もスコアを大きく伸ばせなかったがディフェンスで耐え抜き、55-61で勝利。レギュラーシーズンで順位が上の相手を下して、2011-12シーズン以来のカンファレンスセミファイナルにコマを進めた。試合後に桶谷HCは「うちの個性的な選手たちが、タフなシチュエーションで力を発揮しました。あと4つ勝って、最後にチャンピオンをつかみたい」と、力強く語った。

 

王座奪回まであと4勝、沖縄に乗り込んだ
カンファレンスセミファイナルの戦い


翌週のカンファレンスセミファイナルは、またもアウェーに飛んでの沖縄戦。5月7日のGAME1は、前半戦を終えて34-35とクロスゲームになった。しかし後半はトランジションを多用し、第3Q開始から3分間で9得点をあげる相手に対して、防戦を強いられてしまう。ここで沖縄に傾いてしてしまった流れを引き戻せず、82-74で敗戦。もう、あとがない状況に追い込まれてしまった。

bjリーグのラストシーズンを優勝で終えるために負けられないGAME2は、前半終了時に39-36と前日同様に僅差の展開。だが第3Qはオープニングショットで綿貫が3Pシュートを射貫くなど、アウトサイドからの攻撃が冴えて23得点。なおかつ持ち前の堅守も発揮して相手の得点を14に抑えて6点のリードを奪う。しかし、ここは沖縄のホーム。第4Qは劣勢の地元チームを後押しする声のボリュームがさらに増した。その声は沖縄の背中を押し、エヴェッサの勢いを削いだ。

最初の攻撃で相馬がスコアしたものの、そこから沖縄の怒濤の反撃を止められない。オフィシャルタイムアウトに入るまで3点しか奪えず、喫した失点は16。勢いの差は、明らかだった。終盤には反撃を試みてファウルゲームを仕掛けたが、届かず。このクオーターだけで30失点を喫し、最終スコアは83-72。bjリーグ最後の戦いは有明に届かず、沖縄の地で終了のブザーを聴くことになってしまった。

試合を振り返って、桶谷HCは言った。その言葉は、脱帽とも取れるものだった。「沖縄の強さ、球団力をまざまざと見せつけられました。(沖縄は)とくに第4Qなど、すごく遂行力が高いバスケットをしていました。それに輪をかけて、会場の雰囲気にもやられたなと思います」

開幕から3連覇を果たしたbjリーグでの11シーズンの戦いは、こうして終わった。次は秋から新たに始まるBリーグへと舞台を移すことになる。
(文/カワサキマサシ)