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2010-11 / 2011-12 数々の困難を乗り越えた奮闘したが
ついに有明行きが途絶えてしまった



 

ブラックウェルが新たなHCに就任、しかしエヴェッサの第2幕は苦難の立ち上がりに


bjリーグ開幕からの3連覇を含め、通算5シーズンで指揮を執った天日謙作ヘッドコーチ(HC)が前季限りで退任。新たな指揮官に、ライアン・ブラックウェルが就いた。ブラックウェルは欧州や南米でのプレーを経て2006年に仙台89ERSに入団し、日本でのキャリアをスタート。2008-9シーズンにあたる2009年2月からエヴェッサでプレーしていたが2009-10シーズン限りで引退し、HCへと転身した。

このシーズンはHCの交替ばかりでなく、ロスターにも大きな変化があった。仲西淳、仲村直人、ナイル・マーリー、デイビッド・パルマーといったチームを代表する選手が退団。ドラフト会議で実業団リーグの三菱電機でのプレー経験がある小淵雅を獲得し、外国籍選手もウィリアム・ナイト、ローレンス・ブラックレッジ、ウェイン・マーシャルが新加入と顔ぶれを変えた。またサテライトチーム「大阪エヴェッサEⅡ」を新設し、前季限りで引退した勝久マイケルがコーチに就任したことも、このシーズンのトピックスである。

チームはスローガンに“Win with defence”を掲げ、よりディフェンスに重点を置いた戦いを標榜してシーズンに臨む。HCの交替にメンバーの大幅な入れ替えで、シーズンの立ち上がりは苦戦することが懸念された。実際に開幕すると、その不安は杞憂に過ぎなかった。新加入の小淵がポイントガード(PG)として巧みにゲームをコントロールし、10月は5勝1敗と好発進。しかし12月に小淵が前十字靭帯断裂で今季の復帰が絶望視され、さらにエースのリン・ワシントン、今野翔太と主力が次々とケガに見舞われて暗雲が立ちこめる。

チームの窮地に台頭したのが、プロ2シーズン目の高田紘久だった。経験の浅さをハッスルプレーでカバーし、小淵の穴を埋めるべく奮闘。またナイトを手薄になったPGで起用するなどで難局を乗り切ろうとし、なんとか上位戦線に踏みとどまった。

それでも苦境が続く現状を打破すべく、年が明けて2月にチームの強化に着手。手薄になっていたガードを補強するため勝久を現役復帰させ、「EⅡ」に所属していた天野喜崇、ケビン・タイナーを昇格。前季途中から加わっていたジェイソン・クロッツとの契約を解除して、現役台湾代表のビッグマンであるツェン・ウェンティンを獲得した。

これらによって一足飛びにチーム状態が上昇することはなかったが、それでも新メンバーとの融合を図りながら粘り強く戦い、シーズンが終盤戦に差し掛かったところで、日本中を揺るがす未曾有の大災害が起こった。2011年3月11日に発生した、東日本大震災である。

 

未曾有の大災害である東日本大震災が発生
bjリーグにも、大きな影響をもたらした


その影響によってイースタンカンファレンスの仙台、埼玉ブロンコス、東京アパッチはシーズン途中で活動を休止。それらのチームに所属していた選手を救済する目的でレンタル移籍制度が設けられ、エヴェッサは仙台からスモールフォワードの薦田拓也、埼玉からガードのケニー・サターフィールドを獲得する。なかでもサターフィールドは終盤の8試合の出場ながら、プレータイムは1試合平均31.0分と主力級の稼働。課題になっていたガードの問題を解決して余りある働きぶりを見せた。

レギュラーシーズンはケガ人の続出や、震災による原発事故の影響を懸念したブラックレッジが退団したのはイレギュラー事項だったが、ほかにも選手の入れ替えが多発するなど難題が相次いだ。それでも地力を発揮して、首位の琉球ゴールデンキングスに2勝差の32勝18敗。ウェスタンカンファレンス2位で、プレーオフにコマを進めた。

カンファレンス・セミファイナルは、ライジング福岡と住吉スポーツセンターで対戦する。福岡はレギュラーシーズンで30勝をあげてエヴェッサに次ぐウェスタンカンファレンス3位だったが、第1戦を79-66、第2戦は85-74で連勝。6シーズン連続のファイナル4進出を果たす。

5月21日に有明コロシアムで行われた、カンファレンス・ファイナルの相手は琉球。一昨季に4連覇を阻まれ、昨季はカンファレンス・ファイナルで下して雪辱を果たすなど、すっかりライバル関係が構築された相手と、有明でまたも激突することになった。

試合はゾーンディフェンスを敷いてくる相手を攻めあぐね、序盤からリードを許す展開。昨季まで在籍し、このシーズンから琉球に移籍したパルマーに要所でスコアを許すなど、苦しい流れが続く。エヴェッサはアドバンテージのあるインサイドを攻めて食い下がるが、時間の経過とともにビハインドは広がり、第3Q終了時点でその差は25点。

絶望的とも言える得点差だったが、あきらめている者はだれもいなかった。ワシントンの連続3P、ナイトのバスケットカウント、マーシャルのポストプレーなどで猛追。ひとケタ得点差にまで迫る。終盤も今野、ワシントンのフリースロー成功で、逆転まであとひと息に迫ったが届かず。2季連続ファイナル進出はならなかった。

翌日の3位決定戦は、新潟アルビレックスB.B.とのbjリーグの古豪対決。両者のファイナル4での対戦は、リーグ初年度のファイナル以来となった。試合は競った展開になり、第4Q残り3分を切ったところで3Pを浴びて72-73と逆転を許す。しかし今野のガッツあふれるプレーでリズムを取り戻し、最終的には85-75で勝利。2007-08シーズン以来の王座奪還はならなかったが、3位の座を死守して意地を見せた。

 

ブラックウェル体制2季目、王者の歯車がに異変が生じ始めた


翌2011-12シーズンも、引き続きブラックウェルが指揮を執った。主力級選手の入れ替えはなく、そこに震災で活動を休止した東京から、リーグ屈指のポイントガードである青木康平を獲得。現有戦力に上積みを得て、2007-08シーズン以来の王座奪還を目指してシーズンに挑んだ。

開幕すると4戦目の琉球戦から9連勝を記録して、ウエスタンカンファレンス首位に立つ。だがその直後、ホームである守口市民体育館での宮崎シャイニングサンズ戦で、このシーズンの不運の始まりのようなアクシデントが起こってしまう。下位チームを相手に11月26・27日のゲームで連勝が期待されたが、第1戦でエースのワシントンが肩を負傷して離脱したのだ。68-70で敗れると第2戦も立て直せず、67-74でまさかの連敗。王者の歯車に異変が生じ始める、小さな音が鳴った。

その後は連勝の波に乗れず、首位の座を琉球に明け渡して前半を折り返す。上位戦線に食い込みながらも爆発力に欠ける現状を変えるべく、オールスターゲームによる中断期間中にロスターの入れ替えを敢行する。昨季に震災の関係で途中退団しながら今季に再契約したブラックレッジと、今季新加入のラベル・ペインとの契約を解除。ともに日本でのプレー経験があるマイク・ベルとボビー・セントプルーを新たに獲得した。

なかでも得点能力に長けたベルの加入はチームにスコアアップをもたらし、後半戦を戦うにあたっての起爆剤にもなった。1、2月戦線は苦戦も多かったがなんとか耐え抜き、新加入選手のチームへのフィットを高めて、ラストスパートをかけようとした矢先だった。

3月13日に、ワシントンが大麻取締法違反容疑で逮捕されるという事件が起こる。センセーショナルな出来事だったが、3月30日に不起訴処分が下った。この一件にともない、ワシントンは4月9日に現役引退を発表。シーズン最終盤でのエースの退団という逆風を浴びながらも、チームは崩れなかった。最終的にはウエスタンカンファレンス2位となり、7季連続でプレーオフ進出を果たす。

 

台頭を始めた京都との決戦、結末はまさかの……


初戦のカンファレンス・セミファイナルの相手は、エヴェッサと1勝差の34勝18敗でウエスタンカンファレンス3位に食い込んできた京都ハンナリーズ。京都は参入3季目で力をつけ始め、エヴェッサにとっても簡単な相手ではなくなっていた。

決戦の舞台は、住吉スポーツセンター。5月12日の第1戦は終始ロースコアの展開のなか、終盤の勝負どころでのターンオーバーが響いて59-64で敗戦。後がなくなった翌日も、中盤までは京都に先行を許してしまう。しかし後半に要所でアウトサイドからの攻撃が相手ゴールを突き刺して逆転に成功し、そのまま逃げ切って有明行きを第3戦に持ち込んだ。

第3戦は第2戦の直後に、インターバルを挟んで5分ハーフで実施。ともに疲労が蓄積するなかで懸命に戦う、好ゲームが繰り広げられた。どちらも要所を守り切り、少ない好機を活かして得点し合ってゲームのウエイトバランスが均衡を保ったまま、終了直前を迎えた。残り時間は0分09秒で、ボールポゼッションは京都。ねらいは2Pであったと思われる京都のプランを遂行させなかったが、その後の展開から終了直前に相手選手が放ったタフショット気味の3Pが、リングを通り抜けてしまった。直後に鳴った無情のブザーは、エヴェッサのファイナルズ進出が6年連続で途切れたことを告げるものだった。

試合後の会見でブラックウェルHCは「とても素晴らしいゲームでした。第3戦まで戦いきった選手たちを、誇りに思います」と、務めて冷静に語った。彼がエヴェッサのHCとして試合後にコメントを残したのは、これが最後になった。