2008-09 / 2009-105季連続の有明進出を果たすも
わずか頂点に届かなかった時代
Bjリーグは4季目になり、勝つことがより困難に
真のライバルになる琉球が台頭する
4連覇を目指す2008-09シーズンに向けて天日謙作ヘッドコーチ(HC)、比嘉靖アシスタントコーチ(AC)は続投。しかしロスターは外国籍に、大きな変化があった。V3に大きく貢献してきたマット・ロティックとジェフ・ニュートンに加え、前シーズンのベスト5に選出されたマイキー・マーシャルが退団。替わってニック・ダウィッツ、エリック・ウォルトン、ナイル・マーリー、ジャスティン・ノートンを獲得した。マーリーを除き、残留したリン・ワシントンも含めて4選手が身長2m越えの大型ラインナップになった。
このころからbjリーグは、より勝つことが難しいリーグになっていた。当初は6チームから始まったリーグには毎年、新規チームが参入。このシーズンは12チームにまで膨らみ、同時にレギュラーシーズンの試合数も初年度の40から52試合へと増加した。
チーム数の増加は対戦相手への対策の労力が増し、選手は試合数の増加で体への負担を大きくする。そしてなにより、新規チームの多くが着実に力をつけてきていて、リーグ全体のレベルが上がってきていた。
力をつけてきた新規チームの代表格は、琉球ゴールデンキングス。参入1季目の前季はウェスタンカンファレンス最下位に終わり、レギュラーシーズンの直接対決ではエヴェッサが5勝1敗と圧勝。ひとつの黒星も、わずか2点差だった。
しかし琉球は参入2季目に、大きな変貌を遂げた。その原動力になったのが、このシーズンにエヴェッサから琉球へと移籍したニュートン。1試合平均20得点が、そのままエヴェッサから琉球に渡ってしまったのだ。開幕から9連勝を飾り、エヴェッサも開幕早々にホームで連敗を喫する。琉球の真のライバル関係は、このシーズンから始まったとも言えるだろう。またリーグ2季目の2006-07から参入した高松(現香川)ファイブアローズは当初から上位争いの常連だったが、このシーズンも安定した力を発揮していた。
大きな波を捉え切れずチームを改革
終盤に盛り返すも、V4はならず
エヴェッサは開幕から大型連勝を作れないなど大きな波を捉え切れず、12月にはアウェイで琉球に連敗。4連覇を叶えるため、ここからチーム改革に着手する。ライジング福岡からトレードで仲西淳を獲得し、ダウィッツとの契約を解除。2月には前季まで仙台89ERSでプレーしていたライアン・ブラックウェルが入団する。ブラックウェルはエースであるワシントンとの相性が良く、彼らのコンビが確立するのとあわせてチームも上昇気流に乗り、終盤には9連勝を記録した。
レギュラーシーズンを通じてはエヴェッサ、琉球、そして高松がウェスタンカンファレンスの3強を形成して展開していった。だが序盤に波に乗れなかったことが響き、ウェスタンカンファレンス1位の座を琉球に明け渡し、2位でプレイオフに進むことになった。
プレイオフ初戦のカンファレンス・セミファイナルは、ウェスタン3位の高松が相手。試合は5月2・3日にホームの守口市民体育館で行われ、初日の第1戦に先勝する。翌日の第2戦は敗れはしたものの、同日に行われた5分ハーフによる第3戦を31-17で勝利をあげ、4季連続の有明行きを手にした。
カンファレンス・ファイナルは5月16日に、有明コロシアムで開催。ここでエヴェッサに立ちはだかったのが琉球、そして相手チームのエースになっていたニュートンだった。試合は序盤からエヴェッサが猛攻を仕掛け、一時は最大17点のリードを築く。だが第4クオーターに、ニュートンが大爆発。次々とゴールに迫ってくる、かつての盟友を止められない。この試合でニュートンひとりに50得点を与える活躍を許してしまい、87-93で敗戦。V4の夢は潰えてしまった。翌日の3位決定戦も、このシーズンにJBLから転籍してきた浜松・東三河フェニックス(現三遠ネオフェニックス)に85-91で敗れ、4季目のシーズンは全体4位の結果に終わった。
看板選手だった波多野が退団
2009-10シーズンは苦難の立ち上がり
王座への返り咲きを期してのぞむ2009-10は、シーズンを迎える前のオフに大きな出来事があった。チーム結成時から看板選手であった波多野和也が、埼玉ブロンコスに移籍することになったのだ。移籍を決めた理由について、彼は当時こう語っていた。
「エヴェッサはありがたいことに、とても環境に恵まれています。ここに居続けることがベストなのかもしれませんが、自分自身がどこかでそれに甘えてしまっているかもしれないと感じるようになりました。それならばもう一度、厳しい環境に身を置いたほうが成長できるのではと思ったんです。埼玉はずっと成績が振るっていないチーム。そこでプレーして、自分をもっと成長させたい」
またもV3メンバーがチームを離れることになったが、日本人は仲村直人、仲西淳、今野翔太、外国籍選手では不動のエースであるワシントンを筆頭にマーリー、ブラックウェルの主力は残留。ここにV2達成時にMVPに選ばれたデイビッド・パルマーが3季ぶりに復帰し、ワキ・ウィリアムスが新加入した。
こうして迎えた2009-10シーズンだったが、前半戦は意に反して黒星が先行してしまう。そうなってしまった要因のひとつは、ゴール下の弱さ。身長206cmのウィリアムスにその役割を期待していたが、彼は本来フォワードタイプの選手。チームが求める役割にフィットしなかったが、素行面でも問題があった。エヴェッサとの契約を1月に解除された直後に、高松に移籍。しかしチームの規律違反を繰り返したため、わずか1ヶ月で契約解除となった。
王座奪還にあと一歩届かず……
草創期のひとつの時代が幕を降ろした
ウィリアムスを放出したエヴェッサは、その代わりにジェイソン・クロッツを新たに獲得。クロッツはセンターを本職とするプレーヤーで、チームの欠点を埋めるには最適な人材だった。クロッツが加入した2月以降、チーム状態は上向きに転じる。“将軍”ワシントンは強い求心力でチームを牽引し、復帰したパルマーは勝負どころで変わらぬ得点力の高さを発揮。プロ2季目の今野はこのシーズンで50試合に出場と一本立ちし、在籍2季目の仲西も先発のポイントガードとして存在感を放った。歯車が噛み合ったチームは連勝街道をひた走り、3月は負けなしの10連勝を記録。そのままの勢いで、レギュラーシーズンをウェスタンカンファレンス1位で駆け抜けた。
そうして迎えたプレイオフ。カンファレンス・セミファイナルは5月15・16日に神戸のワールド記念ホールで、4位で勝ち上がってきた滋賀レイクスターズ(現レイクス)を迎え撃った。第1戦は終盤まで拮抗した展開が続き、終了間際はリードを許す展開。しかし残り0分09秒でワシントンが倒れ込みながら放ったシュートがリングを通り抜け、劇的な逆転勝利を収める。劇弾を沈めたワシントンは興奮のあまりテーブルオフィシャルの机に飛び乗り、アリーナ全体に響く雄叫びを上げた。その勢いのまま第2戦も勝利し、5度目の有明行きの切符を手にする。
有明での初戦の相手は、ウェスタン2位の琉球。前季に4連覇を阻まれた因縁の相手に84-65と完勝を収め、王座奪回までいよいよあとひとつ。ここで立ちはだかったのが、前季に参入1季目ながら全体3位の好成績を収めた浜松だった。立ち上がりこそは試合をリードしたが、時間が進むごとにエヴェッサの戦い方に対応してきた相手に苦戦。中盤以降はディフェンスで後手に回ってしまい、そこからオフェンスのリズムも作ることができない。結果的には56-84の大差で敗れてしまい、王座奪還はならず。シーズン全体で2位は客観視すれば好結果であるが、スリーピート(スリー・リピート=3連覇)を達成した絶対王者にとっては、そのプライドにかけて受け入れ難い結果でもあった。
このシーズン終了後に天日HC、比嘉ACが退任を表明。エヴェッサにとってbjリーグ草創期のひとつの時代が、静かに幕を降ろした。
(文/カワサキマサシ)