2006-07 故障者続発で5連敗を経験するも
最後は王者の試合運びでV2達成

V1の主力メンバーが残留 順調な調整で開幕への準備を整える
リーグ開幕初年度に王座を手にしてから、約1ヶ月後。勝利の余韻に浸ったのも束の間、2006年5月には2季目のシーズンへの動きを始めた。5月17日には今宮戎神社に優勝を報告するために参拝し、同28・29日には台湾で開催される「花蓮国際招待バスケットボールトーナメント」に招待され、初の海外遠征を実施。海外での経験を得る、貴重な機会となった。そして6月1日の天日謙作ヘッドコーチとの契約継続に続いて、同月下旬から随時、新シーズンを戦う選手との契約を発表していく。最終的に石橋晴行、波多野和也、宍戸治一、中村友也、城宝匡史の日本人主力メンバーは昨季に続いて残留。デイビッド・パルマー、マット・ロティック、リン・ワシントン、ジェフ・ニュートンの外国籍選手も全員がチームに残った。新たに加わったのは、前松下電器パナソニックスーパーカンガルーズで日本代表経験もある203cmのビッグマン佐藤浩貴と、日本体育大学出身のポイントガード斉藤資のふたり。佐藤はbjリーグドラフトの1巡目、斉藤は2巡目指名によるものだった。
こうして戦う布陣が固まり、新シーズンに向けての練習が本格化。7月下旬から、大阪府内でトレーニングキャンプを実施する。優勝メンバーのほとんどが残留したこともあり、新チームはスタート時からスムーズな連携が図られ、天日HCが掲げる“走るバスケ”も充分に浸透していた。
韓国王者との日韓戦に出場 リーグはチーム数拡大路線へと
シーズン開幕を前にした9月には、bj-KBLチャンピオンシップゲームズが開催。これはbjリーグと韓国KBL、双方の王者ホーム&アウェイ形式で対戦し、日韓の王者を決する大会と位置付けられた。エヴェッサは前年度のbjリーグチャンピオンとして出場し、ソウル三星サンダースと対戦。第1戦は9月25日に大阪市中央体育館で開かれ、87ー80でエヴェッサが勝利。ソウルの蚕室体育館に舞台を移して同27日に行われた第2戦は78ー85で黒星を喫する。2戦を通じて1勝1敗で、なおかつ得失点差も同じことから、両者優勝の結末に終わった。
その後10月は計4試合のプレシーズンゲームを行って調整を図り、いよいよ11月4日に2シーズン目のbjリーグが開幕。以降リーグは毎シーズン、エクスパンションを行い年々、新規参入するチームが現れる。この2006-07シーズンは富山グラウジーズ、高松ファイブアローズが新たに加わった。
開幕3連勝と好スタート しかし直後に、まさかの5連敗
エヴェッサは開幕戦を、東京アパッチのホーム有明コロシアムで戦って2連勝。翌週のホームに戻っての大分ヒートデビルズ戦にも勝利して3連勝と、ディフェンディングチャンピオンは順調なスタートを切った。しかし翌日は58ー67のロースコアで敗れて、連勝がストップ。次の高松戦は2戦とも90得点以上をあげながらも競り負け、続く新潟アルビレックスB.B.戦もひとつも勝てず、まさかの5連敗を喫する。昨季の優勝チームに対して、ライバルたちがマークを強めてきたのは明らかだった。苦境を脱するために、一度は今季の契約を見送った田村大輔と11月30日に再契約。昨季の田村はコートに立てば熱いプレーで仲間を鼓舞し、ベンチにいてもムードメーカーであった。そんなモチベーターが連敗に沈むチームの空気を変えたこともあって、12月2日にホームで行った高松戦に勝利して連敗を止めた。そこから12月は6勝2敗で月間で勝ち越し、1月は6勝0敗。この間は今季最多の9連勝と突っ走った。このまま一直線にV2への階段を駆け上がる勢いだったが、まさに好事魔多し。
主力に故障者が続発して窮地に そこに代表歴ある新戦力が加入
1月20日の東京戦でニュートンが右ヒザの半月板損傷、翌日のゲームでは石橋が鼻骨骨折。さらに同27日のオールスターゲームで大黒柱のワシントンが右足首を捻挫と、主力選手が次々とアクシデントに見舞われてコートを離れる。そんな厳しい状況下にあるチームを救う選手が、2月に途中加入した。仲村直人である。沖縄出身で学生時代は日本体育大学でインカレ優勝に貢献し、卒業後は実業団チームの松下電器に入団。3Pシュートを武器とする192cmの大型シューティングガードで、日本代表メンバーにも名を連ねていた。
彼のエヴェッサ入団は少々、複雑な経緯を経た。仲村は2005ー06シーズン限りで松下電器を退団し、その後にエヴェッサが獲得の意思を示したがリーグが実施するトライアウトが終わっていたため、選手契約には至らず。年が明けて2007年2月にトライアウトを経て、アーリーチャレンジ制度で富山と契約。直後に来季のドラフト1巡目指名権に金銭を加えた交換トレードにより、エヴェッサに移籍した。ちなみにこれは、bjリーグで初めて成立したトレードである。この2006ー07シーズン終了時にはアーリーチャレンジ期間が終了し、翌季のドラフトであらためて東京アパッチから1巡目を受けたが、城宝とのトレードによってエヴェッサに残留。その後、2009-10シーズンまで、貴重な長距離砲としてチームを支えることになる。
シーズン終盤にラストスパート レギュラーシーズン1位でファイナルへ
苦しいチーム状況ながら仲村の加入により、2月は4勝4敗の月間5割で乗り切った。そして3月を迎えて故障者が復帰すると一気にラストスパートをかけ、3月17日にホームで行った高松戦で6連勝を達成する。この間の3月11日の仙台89ERS戦は第3Qまでリードを許す苦しい展開だったが、これを救ったのがパルマー。この第3Qだけでリーグ新記録の26得点を叩き出し、さらに1試合での得点数は歴代2位となる42得点を記録。ゲームを引っ繰り返し、101-86の100点ゲームで勝利を飾る。4月1日の大阪市中央体育館で東京と戦った最終戦にも勝利し、29勝11敗と前季に続いてレギュラーシーズン1位でプレイオフにコマを進めた。新規参入の高松とのファイナル 主導権を握り続け、連覇を果たす
有明コロシアムに乗り込んでのセミファイナルの相手は大分。試合は4月21日に行われ、レギュラーシーズン最終戦から約3週間もゲームから離れた影響があったのか、前半のエヴェッサには固さが見受けられた。だが時間の経過とともに普段のペースを取り戻し、ゲームをコントロールする。大分のミスを誘発するなどの試合巧者ぶりを発揮しながら、得点こそいつものように多くは奪えなかったが69ー63で勝利した。翌日は2連覇がかかるファイナル。勝ち上がってきたのは、参戦初年度の高松だった。試合は高松のルーキーでアウトサイド巧者の岡田優の3Pが決まるなど、序盤から点の取り合いになったが、試合の主導権はつねにエヴェッサが握り続けた。追いすがる高松を徐々に引き離し、最終的には94ー78で完勝。V2を達成した。
パルマーが最優秀選手に選出されたほか、個人賞ではニュートンが2季連続の最多ブロックショット、ワシントンがシーズンベスト5に選ばれた。